【事件現場を歩く】アウンサン廟爆破事件

デザイナーの須川まきこさんやパラリンピアン大西瞳さんとほぼ同年代の自分にとって、物心付いた頃のミャンマー・・・いや、ビルマとは「軍事政権」「クーデター」とニュースでおぼろげながら報じられるイメージしかなかった。
それで、首都の「ラングーン」とは「乱軍」という意味なのだと思っていた程である。
また、韓国や北朝鮮に関して言えば、ニュースで「全斗煥ぜんとかん」がどうたら、「金日成きんにっせい」がどうたらニュースで何か言ってる、というイメージしかなかった。
特に北朝鮮については「近くて遠い謎に満ちた国」という報道しかなされていなかった。

そんな自分にとって、「アウンサン廟爆破事件」は、実はリアルではあまり記憶にない。
しかし、場所もあろうにビルマ建国の父であるアウンサン将軍の墓所をテロに使ったということを非常に重く見たビルマが、北朝鮮と断交したという事件である。

昭和58年10月10日の朝日新聞1面トップにアウンサン廟の事件が大きく報道されている。
何しろ全斗煥ぜんとかん大統領が殺されたわけではないにしろ、日本で言えば以下のようなポストの閣僚が一気に殺されたのである。

  • 総理大臣秘書
  • 外務大臣
  • 通産大臣
  • 資源エネルギー庁長官
  • 経済企画庁長官

世界的にハチの巣をつついたような騒ぎになり、事件当初から「北朝鮮の仕業か」ということは噂に登っていたようである。

また、1面の他のニュースに目を移すと「自主流通米」がどうたらという話もある。
そうそう、コメの販売は政府が管理していたのだった。で、その管理外のコメがあって、それが自主流通米でどうたら・・・ という認識だけはあった。
これらは、減反政策とも共に記憶されている。
ところが、この食糧管理制度は、1993年の冷害と「タイ米騒動」で転換を余儀なく迫られることになる。このタイ米騒動は非常によく覚えている。

翌10月11日の朝刊では、犯人像についての推測が始まっている。

北朝鮮説の他に、反政府勢力説もここではささやかれている。
タイ、中国、インド、バングラデシュと国境を接するビルマにとっては、国境付近の少数民族や共産主義勢力など、争いの種は常にあった。

現在であればロヒンギャ問題が世界的な指弾の的となっているが、日本は国連の非難決議には賛成しなかった。それはミャンマーの安い労働力を手放したくない日本の配慮だからと言われている。でも安い労働力って何だろう? 「外国人研修生」という名の奴隷? そこまでして安い労働力を維持しないと、もはや日本経済は成り立たない?
どういう判断が働いて、国際正義に基づく決議に賛成しなかったのか、また、日本までが国際正義を発揮した場合にどのような結果がもたらされたか、説明が欲しい所である。

また、この日の3面の隅には、この2年後に開催が予定されていた筑波万博に関する記事も掲載されている。

翌10月12日、早速北朝鮮の実行犯が逮捕された旨が報じられている。

それ以上に1面トップとなっているのは、ロッキード事件の判決についてである。
この件は、おぼろげながら記憶がある。
自分にとって、田中角栄とは「首相」というよりは「首相だったのに逮捕された人」というイメージの方が先行していた。

また、野党は自民党の金権政治を指弾するべく街頭行動に出る旨が報じられている。
インターネットの無かった時代でもやはり「野党には実行力が無いからダメだ」などと知ったようなことを言ってくさす人はいただろうか。
やはりそのような考えがあったからこそ、自民党の「55年体制」が長く続いたとみることもできようか。

さて、今回の「事件現場を歩く」は、本コーナー史上初の海外遠征である。
どうせミャンマー旅行している最中なので、ついでだから行ってみましょう!

チミンダインの駅前に来た11番のバス(とは言ってもビルマ数字で「၁၁」としか書いていない)の運転手に「シュエダゴンパゴダに行く?」と聞いてみると「行く」と言う。

一も二もなく飛び乗って着いた先がここである。
今回の決死モデルは、コリアマターだけに中の中の人が韓国通のアハメストルソーさん)に登場願いたい。

さて、ではシュエダゴン・パゴダの向かいにあるアウンサン廟に向かいたい。
事件は建物の屋根裏で起こったというが、その「建物」が、Googleマップでも見当たらなかった。
事件から30年経った2013年まで公開をやめたというが、その間に建物の必要性を感じず取り壊したということだろうか。

果たして門前まで行くと、何やら嫌な予感が・・・

門番をしている男に聞いてみる。
「あの・・・今日やってる?」
「やってないよ!休み!」
「あ、そう・・・」

せっかく来たのに困ったことになった。
まあ月曜日が休みなんて博物館系ではよくある話か。
それにしたって間が悪い。

仕方がないので、フェンス越しに撮れる分だけ撮ることにした。

歩いているのは、IDカードをぶら下げた清掃の人たち。

 

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