【ブックレビュー】兵士のアイドル 幻の慰問雑誌に見るもうひとつの戦争

AKB48が一企業の社員慰労会に動員されたり、果ては総理大臣主催の海外賓客を集めたパーティにまで動員される姿を見るというのは、実は嫌いではない。
自分だって権力や資本を手にしたら、少女たちを侍らせて権勢を言祝ぎたい欲求は多大にある。

北朝鮮の喜び組だって同じだろう。
一つの巨大な権力が国中から美少女をかき集める。
そして己がリビドーのために消費する。
いいじゃないいいじゃない。

だからこそ両腕のない少女たちによる喜び組「TRS48」を作ったのだ。

でもそれが「戦争」という重いテーマの元にあったら・・・?
今回紹介する「兵士のアイドル」(押田信子著 旬報社)はそのような本である。

昭和13年から終戦まで「戦線文庫」という、前線の兵士向けの芸能雑誌が発行され、戦地に送られていた。

「男女七歳にして席を同じくせず」という禁欲的な道徳観の時代に、当時の映画や活劇を彩っていた女優たちのグラビアが踊っている。
よくぞ「軽佻浮薄」「淫卑」などと検閲されもせずに、ここまで自由にモノが作れたと思う。
決死モデル:チームTアンヌ

戦後のGHQによる「3S」(Sports、Sex、Screen)政策ではないが、「忠君愛国」だけで兵士の士気が上がるものではないということを、さすがの軍部もわかっていたということなのだろう。

本書では、その「戦線文庫」を彩り、90台となった今もなお矍鑠としている当時のアイドルのインタビューも掲載されている。
銃をとって支那や南洋の戦線に向かったのは、ステージで踊る彼女達を「推し」ていた普通の青年たちだったのだ。

あくまで書中では、現政権や憲法9条改憲への批判はなされていないので以下は私見となるが、9条を改憲して「国際的な紛争解決手段として交戦力を用いる」ようになった時、戦地にはAKB48やももクロも行くことになるだろうか?

 

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