四肢のうち三肢までが無いという「triple」で最も有名なのは、エクアドルのVictoria Salcedoさんじゃないだろうか。
「障害は個性」などと言うまでもなく、四肢切断者の切断部位は人それぞれ。中には上述Victoriaさんと同じようなtripleの人だっていた。
傷痍軍人に対するケアの一環として、そのような障害を持った先達の講演を行う、ということもやっていたようである。
昭和13年3月2日、牛込の東京第一陸軍病院(現:国立国際医療研究センター)において、講演会が行われた。
講師は、岡山県に生まれ6歳の時鉄道事故で両腕を肩から、片足を股から失うという、Victoriaさんとほぼ変わらない障害を持ちながら、金光中学(現:金光学園高校)から東洋大学に進学し、この時点で国民精神総動員中央聯盟で勤労者敎育中央会の講師をしているという34歳の男性。
そこまでの障害がありながら立派に働いているということはよほどの努力があったこととは思うが、その当時で私立中学や私立大学に通わせてもらえるというのは、実家は相当太い所であったということは伺える。
ちなみに、「国民精神総動員中央聯盟」というのは、日中戦争を受け「挙国一致」「忠尽報国」「堅忍持久」の方針を国民に植え付けるために昭和12年に設立されたばかりの政府外郭団体であったという。今でいえば日本会議がそれに近い存在になるだろうか。
この国民精神総動員中央聯盟は、この2年後の昭和15年には「大政翼賛会」となり、いよいよ独裁政権を敷いていくことになる。