Many-Splendored Thing

昭和30年公開の米映画「慕情」は、朝鮮戦争期の香港を舞台にした映画で、1950年代の香港の街並みがカラーでふんだんに楽しめる名作である。

映画・・・ことに恋愛映画にひとっつも興味のない自分がここまで感動したのは、やは主人公の2人が会っていた丘で、最後は恋人がいなかったという所だったと思う。
これは、韓素音ハンス―インの自伝を元に映画化したものであるという。
その韓素音ハンス―インは、日本で東日本大震災があった翌年の2012年にスイスはローザンヌでその長寿を全うしている。

ともあれ、香港の風景がふんだんに映し出された名作であるだけに「聖地巡り」をする観光客も多いようで、英語版のWikipediaには撮影地に関する情報も掲載されている。

The former Mok residence located at 41A Conduit Road became the Foreign Correspondents’ Club in 1951.
In the film it is portrayed as a hospital. The building is now demolished and Realty Gardens apartment complex has occupied the site since 1970.
(干徳道41A号にあったかつての莫幹生邸は、1951年に外国特派員協会の建物となった。映画では、(主人公の勤務する)病院として撮影されている。現在では取り壊され、1970年以降は高層アパート群となっている)
The former colonial-style Repulse Bay Hotel, demolished in 1982, and now the site of The Repulse Bay apartment building.
(かつてのコロニアル・スタイルのレパルスベイホテルは、1982年に取り壊された。現在はレパルスベイアパートとなっている)
The Tai Pak Floating Restaurant, now part of the Jumbo Kingdom.
太白海鮮舫は、現在はJumbo kingdom(珍寶王國)の一部となっている)
The famous hill-top meeting place where the lovers used to meet was located in rural California and not in Hong Kong.
(有名な、2人が会っていた丘の上はカリフォルニアの郊外であり、香港ではない

例の丘は、一説にはビクトリア・ピークとも清水湾郊野公園とも諸説あったが、何とも夢の無いオチであった。
ともあれ、その後を偲んで香港に行ってみることにしたい。

今回は会社帰りに夜行便で行くので、その前に銭湯で体を癒すことにしたい。
場所は元旦にも行った銀座の金春湯。
決死モデル:チームR天美

会社帰りであるばかりでなく。新年会でたらふく飲み食いした後なので体重がかなり増えていた。
ちょっと香港では歩きまくることにするか・・・

そういえば新橋のビル工事現場で火災があったが、山手線の線路を挟んですぐの場所にあり、消防車が止まっていた。

飛行機は羽田から23:55発なので、時間が余ってるかと思ったが結構ギリギリなのですぐに新橋から浜松町へ行き、浜松町からモノレールで羽田空港の国際線ターミナルへ。

果たして羽田空港に到着。
チェックインには人がほとんどおらず、自分が最後のようだった。

今回は香港エクスプレスというLCCだけに、チェックイン時の荷物の託送も別途料金がかかる。
それで「ボーディングブリッジでのお預けなら料金がかかりませんが」と言われたが、結局自分で(TRSメンも含めて)セキュリティチェックするというのであれば、預ける意味が全くないので機内に持ち込むことにした。
とにかくセキュリティチェックは面倒臭い。確かミャンマーに行った時に乗り換えたバンコクの空港では「ハハハ。大の男がお人形さん持ってる」と笑われてしまった。
まあいいや。こんなのも「一時の恥」。。。

そしてまたLCCだけに、ブリッジがやたら遠い所にある。かなり歩かされたが今回は沖止めではない。
決死モデル:チームWBナギサヤ

兎も角も香港に向けて出発。
今回のキャリアは香港エクスプレスなので香港の会社であるが、印象的なことがあった。
トイレに立とうと思ったらスッチーさんが別の座席に軽食を出しているので邪魔で出ることができない。
これが日本のキャリアなら、お客様のためにどいただろうが、香港のスッチーさんは「Just a moment、 just a moment!」と自分の作業を優先して通さず、しまいには他の人にトイレに先に入られてしまった。
腹が立ったが、日本の「お客様は神様です」というのに慣らされた身には、こちらの方が世界標準なのかもしれない。

朝4時ちょうど、香港赤臘角チェクラプコク国際空港に到着。
空港では「豚年」を祝っている。日本では「亥年」であるが、中国でもベトナムでも今年は「豚年」。しかし何でまた日本では「猪」になったのか・・・
決死モデル:チームR持田

機内ではほとんど寝ていないので眠い。
まず空港に着いてやることはインターネット環境の構築である。つまりWi-Fiルータを確保して、iPadにはSIMカードを差し込むこと。

SIMカードはセブンイレブンで購入。
香港だけで使える(つまりマカオや深圳では使えない)15日間有効で3GBのもの。
深?に行く予定は一応あるが、まあ・・・ 大丈夫だろう。きっと。

そしてWi-Fiルータは24時間営業のスタンドでレンタルすることに。これがあれば、最低限LINEなどの連絡に困ることはないだろう。

そして機場快線エアポートエクスプレスであるが、6時発が始発電車であるという。
ぞして券売機はその20分前にならないと動かないという。
どうせなら単程車票かたみちチケットではなく八達通オクトパスにするか・・・

果たして6時になり機場快線エアポートエクスプレスが動き出す。
電車はアルストーム製?で、ドラえもんに似たカラーリングである。台湾の「スネ夫」(EMU700)みたいな綽名でも付いていないだろうか。

機場快線エアポートエクスプレスはまだ暗い香港を快調に飛ばす。
路線図を見て思ったのだが、空港から香港迪士尼楽園ディズニーランドに行く際、迪士尼線に乗り換える欣澳ヤンオウには止まらないので、いったん青衣 ツィンイーで降りて、そこから東涌トンチョン線に乗り換えて、そこからまた迪士尼線に乗らなければいけないらしい。
これはもう線路の構造上仕方ないのかな。総武線や常磐線の快速から武蔵野線に乗り換える際、松戸なり市川なりで乗り換えないといけないのと同じで。。。

そして香港駅に到着。
香港駅とは言っても、この機場快線が開業してから設置されたもので、香港で元々の列車ターミナルと言えば「尖沙咀チムサーチョイ」火車站」。現在でも時計塔だけ残っているあの駅である。
現在でも大陸からの列車は来るが、「九龍」駅を経て現在は「紅磡ホンハム」駅となっている。
自分が初めて香港に来た時はまだ「九龍」駅だった。それと、空港は啓徳空港で、到着するときは迫りくるビルが圧巻だった。パイロットにとっては操縦が大変だったようだが・・・

ただし、今回の香港駅は、半島にあるその紅磡ホンハムではなく、香港島の方にある中環セントラルにある。

ところで、6時を過ぎているのだが外はかなり暗い。
決死モデル:トルソーさんナイ

そして、「慕情」の病院のロケ地となった外国特派員会館へ行くために、この香港駅から出るという3番の小巴ミニバスに乗りたいのだが、全くその案内が無い。
この香港駅自体が、国際金融中心センターの一部となっているのだが、香港と言うのは想像以上の複雑なコンクリートジャングルである。
そして朝早いのでどの店も営業しておらず、誰に聞くこともできない。

結局、清掃のおじさんに教えてもらって小巴ミニバス総站ターミナルにたどり着くことができた。
国際金融中心センター碼頭ピア側の隅っこから出発していた。

ここまで案内が不親切と言うのはどうにかならないだろうか。
それとも、小巴ミニバスと言うのはあくまで地元の人のための乗り物であり、観光客が使う際はそれなりの覚悟で乗れという事なのだろうか。

小巴ミニバスは日本でもあるようなマイクロバスで、坂道を一気に駆け上がっていく。
日本にはないような急峻な坂の上に、超高層ビルが何棟も建っている。それが香港の風景である。

そしてバスは終点の宝珊道ポーシャンロードに到着。
例の病院があった所は干徳道コンデュイットロードであるとのことだったが、撮影地はその病院(外国特派員協会)の更に上方のようなので、宝珊道ポーシャンロードまで来たのである。
周辺は高級住宅地のようで、犬を連れた住民が散歩している。何と、犬の糞専用のごみ箱まである。これはたまげたね。

兎も角も、道が大きく折れ曲がるあたりが、撮影地に一番近付ける場所の様なのでそこで撮ることにする。
しかし、今日は霧なので全然港の風景は見えない。

・・・と、あの石造りの手すりは・・・?
何と、映画で撮影したものと全く同じ手すりではないか・・・!
残ってたんだ。だったら撮らない方はない。
マンションの敷地になっているというが、。知らないふりをして入ることはできないだろうか・・・ 注意されたらそこで「ごめんなさい」ということで。

宝珊道ポーシャンロードを駆け下りて、例のマンションへ。
案の定「私有地なので立ち入り禁止」と書いており、管理人が駐車場の出入りをチェックしていたが、幸いこちらは見咎められなかった。大きい荷物は持っていたが、住民だと思われただろうか。

そして例の手すりが残る急な階段を登り、四阿あずまやのあるあたりで撮ることにしたい。
この緑青の屋根が特徴的な四阿あずまやも、「慕情」には出てきている、
決死モデル:チームY宇崎

決して褒められたやり方での撮影ではないためか、心なしか宇崎の顔も暗い。
そして何より、霧で下界が見えない。

ともあれ来意をひとつ果たし、ミニバスのバス停に戻ることにする。
一般人が入れるのはせめてここぐらいまでであろう。

あとはバスで中環セントラルに戻りましょう・・・
バスは6時の始発から10分と置かずに来るので便利である。
基本的に香港のバスは路面電車と同じで2階建てではあるが、ミニバスも結構いろいろなところで走っている。
カーブの多い坂道を走るのであれば、確かにこのようなミニバスの方が坂道発進も容易ではあろう。
というか、2階建てのバスがこれだけの坂道を発進するとしたら、それはそれで怖いような気がする。坂道発進に失敗して下に引きずり降ろされたら想像に余りある。

中環セントラル天星小輪スターフェリー碼頭ピアに近い。尖沙咀チムサーチョイへ行く天星小輪スターフェリーだけではなく、大嶼ランタオ島や南丫ラマ島等へ行く高速船も出ている。
碼頭ピアは合計7つあり、どの碼頭ピアも利用者で賑わっており八達通オクトパスも使用できる、香港ではなくてはならない交通手段である。

向こうには大嶼ランタオ島へ行く高速船が止まっている。あのような双胴式の方が水の抵抗が少なく走りやすいのだろうか。
決死モデル:チームP桃園

そしてまた、喫煙禁止で違反者は1500HK$と書いている。
香港は何につけ罰金が書いている。たしか電車の中で飲食すると2000HK$だっただろうか。このような罰金文化も分かりやすくていいのかもしれないが。

さて、尖沙咀チムサーチョイへ行くのであれば何と言っても天星小輪スターフェリーである。
船はここでも2階建てであり、2階席が1等ということになっているらしいが船の上で1階と2階の行き来をすることはできない。そもそもの乗り場が分かれているのである。
いつぞや、小池百合子がただ単に電車を積み重ねただけの様な「2階建ての通勤電車」を提唱していたが、この天星小輪スターフェリーみたいなやり方であれば、万に一つも実現できるかもしれない。

ところで、この船と言い、尖沙咀チムサーチョイ碼頭ピアと言い、「慕情」の頃から変わっていないのではないだろうか。
50年代の情緒がそこここにある。

さて尖沙咀チムサーチョイ碼頭ピアに着きましたと。
碼頭ピアはいろいろな店で賑わっており、各地へ2階建てのバスが待っている。
そして、かの有名な尖沙咀チムサーチョイ火車站の時計塔と全部入りで決死
決死モデル:チームWB嵐山

啓徳空港もあった昔であれば、ここが香港の陸海空の交通の中心地であった。
初めて啓徳空港に降り立った頃はまだブリティッシュ・ホンコンで、空港を降りて人ごみの中を歩いていたらすぐに重慶大廈チョンキンマンションだったような気がする。天星小輪スターフェリー碼頭ピアはここまで遠かっただろうか。

ともあれ、今度は高速鉄道の西九龍駅に向かって、広東道カントンロードを北上することにしたい。

それにしても・・・
この広東道カントンロードはやたら海外のファッションブランドが多い。
曰くルイ・ヴィトン、
曰くココ・シャネル、
曰くコーチ、
曰くイブ・サンローラン、
曰くドルチェ・ガッバーナ・・・

そういえばドルガバと言えば、少し前に東洋人を馬鹿にしたようなCMを作成して、中国人モデルが一斉にイメージキャラクターの契約を切ったという事件があったような気がする。
しかし今こうして香港では盛業中であるが、その辺りの始末はどのようにしていたのだろうか気になる所である。

気になってツイッターで「ドルガバ」で調べたら、少なくとも日本では例の件は忘れ去られているようであった。

さて、歩くことまるまる1駅分にして地下鉄の柯子甸オースチン駅に到着。
そこから高速鉄道の西九龍駅に接続している。
香港と言うのは駅と言う駅がこんな感じで、駅舎を撮ろうといってもビルの一角となっており、駅舎を撮った気になれない。

高速鉄道の出口から吐き出される人は、何となくガヤガヤと遠慮のない感じがする。
そう。日本で良く目にする「中国人観光客」と同じ雰囲気を感じるのである。
決死モデル:チームY楼山

高速鉄道は結構頻繁に出ており、時刻表で確認できるだけでも上海、福州、長沙、重慶と言った南部の主要都市に向けて出ている。さすがに北京ぐらい遠い所には出ていないのだろうか。それとも寝台でならある?
また、近くへの需要もある用で、広州南行きもそれなりに頻繁に出ている。
香港~深?だけという需要も、それなりにあるようだった。

一番早く乗れる広州南行きは福田フーティエンには停車せず、深圳北になら止まるというので、その深圳北までの切符を買って乗ることに。

また、高速鉄道は中国国鉄が運営しており、西九龍の隣の駅は深圳の福田フーティエン駅となっており、つまり金盾の向こうということになる。
それで出国検査を伴う「離港」の手続きが必要になって来るわけだ。

それだけでなく、荷物のセキュリティチェックや、中国海関による入国審査まで行われる。
案内表記も簡体字で書かれている。全く大陸中国のそれである。
そして、パスポートに「中国西九龍」の入国印が押されて月台ホームへ。
その復興号は地下駅の西九龍を出発。
しばらく地下を走るので、車窓など楽しめたものではない。
地上に出た頃には、高層マンションに簡体字が書いてある。つまり「金盾の向こう」に入ったという事なのだろう。

動車組に揺られることものの25分で深圳北に到着。
ホームの向こうには「和諧号」が止まっていた。あれは西九龍を目指すものであろうか。それとも深?北から各地を目指すもの?
決死モデル:トルソーさんアハメス

中国が文化大革命だの人民公社だのといって改革開放する前の頃、自由主義陣営である日本から大陸中国へ入る道は、唯一この深圳からという時期が長く続いていた。
自分が初めて中国に来た時・・・つまり啓徳空港から羅湖を経て入った時は、まだその頃の面影が残っており、鄧小平による改革が始まって数年経っていたとはいえ、深?の駅の設備も社会主義の面影が随分と残っていた。また、駅員も不愛想で、客に怒鳴るのが当たり前だった。
しかし、今やそんな面影は微塵もない。

さて、「高速鉄道に乗る」という来意はここで果たしてしまったので、もう深?でやることなど何一つない。なので地下鉄4号線に乗って福田フーティエン口岸に戻ることにしたい。

・・・とはいいつつ、現在人民幣レンミンビーの持ち合わせが全くないのだ。
全く。

これでは、地下鉄に乗ることすらかなわない。
仕方がないので、両替所で多少の人民幣レンミンビーに交換して地下鉄の切符を買った。
決死モデル:チームWB小津麗

深圳の地下鉄の切符はトークン方式であった。むしろ世界的にはこちらの方がメジャーで、モスクワや平壌も同じ方式である。
日本でも、昭和2年に開業した当初の銀座線は、5銭銅貨を改札に入れてゲートを回す方式であったという。
深圳でも香港の八達通オクトパス同様「深圳通」というカードが無いわけではないが、今回はそこまで行ったり来たりするわけではないので買わない。

そして4号線で福田フーティエン口岸へ。

福田フーティエン口岸は純粋に、香港に行く人だけのための駅となっている。
それで、地下鉄を降りた客は一斉に辺防検査を目指すこととなる。
辺防検査はほとんどが電子化されており、げーどの数も非常に多い。
中国国民と香港居民は電子化された身分証があり、それをかざせば通れるようになっている。

さすがにセキュリティチェックはごく簡単なものであった。

あとは橋を渡って香港の落馬洲ロクマーチャウを目指すだけ。
現在の福田フーティエン落馬洲ロクマーチャウの橋は、屋根が掛かっていてどんな天気の時も越境できるようになっている。
外を見ると、昔ながらに川が流れていた。今でこそ双方にマンションが林立しているが、昔はかなり寂しい所であったという。その面影は感じる。

さて、香港側の落馬洲ロクマーチャウはKTRとなった東線の落馬洲ロクマーチャウ支線が出ている。
支線とは言うものの運行系統は東線と一体化されていて、全ての列車が紅磡ホンハムを目指す。
決死モデル:チームRハナ

その紅磡ホンハム行きの電車はかなり混んでいた。
どうせなら頭等ファーストクラスに乗るか・・・
東線はまるで日本の東海道線や横須賀線のように、頭等ファーストクラス車が連結してある。
乗り方は、その頭等ファーストクラスのホームの近くにある機械に八達通オクトパスをかざす。そのことで頭等ファーストクラス に乗ったということが記録され、降りた駅で一般席の2倍の額が引き去られるというものである。
そしてまた、日本の東海道線や横須賀線同様、お金を払ったからと言って着席できるとは限らない。
その点、今回は始発駅の落馬洲ロクマーチャウからなので心配はない。

そして太和タイウォーで降りて、香港鉄道博物館を目指す。
太和タイウォー駅の周辺こそ香港らしい高層マンションで犇めいているが、川を渡ると途端に庶民的な商店街となる。
決死モデル:トルソーさん丸尾

商店街では生々しい肉や魚のにおいが立ち込めている。
恐らくここでは英語など通じないであろう。社会主義化もされていない、生のままの「チャイナ」がここには広がっているのだろう。

また、ミニバスの行先表示にしても店舗の看板にしても、独自の教科書体というか筆文字で書かれている。
これを「香港フォント」と呼称することはできないだろうか。

そしていよいよ、今回の目的の一つであった香港鉄道博物館である。
この建物は、かつての大埔塘<タイポーマーケット>駅をそのまま使用したものであり、昭和58年に電化された際に、大埔塘タイポーマーケット駅は九龍寄りに移転し、残った旧駅舎を鉄道博物館として利用するに至ったものであるという。

駅舎は昔ながらの中国式の石造りのもので「1913」とある。
この時代であればまだ中国は清朝であり、科挙もあったであろうか。
そもそも香港がなぜ英領になったかと言えばそれはアヘン戦争によるものである。
庶民の生活に役立つわけではない漢籍の知識による科挙で選ばれた官僚が統治し、庶民の間ではアヘンがはびこっていた所にイギリスは鉄道を敷くなど文明をもたらしたわけである。

だからと言って、植民地支配が良いことだと結論付けるつもりはないが・・・

さて、鉄道の方を見てみよう。
駅舎の前に止まっているアメロコ51号機の前では、新婚のカップルがポーズを付けて写真を撮っている。
鉄道に関するこんな施設で結婚写真を撮るというのは、日本人の感覚からすると斬新に思える。あえて言うならオタカップルなら日本でもありかもしれないが・・・

駅舎内は、駅事務室の様子も保存している。
切符売り場は待合室と鉄格子で隔てられており、閉塞機はイギリス製のものであろうか。日本でおなじみの赤い閉塞機とは違って大作りで武骨なものとなっている。

待合室側は、往年の九広鉄路のビデオ映像などを流している。
また、切符売り場には「KCR NOTICES」と言う告知板がある。実際にこの駅が現役だった頃、鉄道内部では英語が公用語だったのだろうか。この大埔塘タイポーマーケット駅を降りた街中では英語が全然通じないのだが・・・

外に出ると、さっきのアメロコ51号の他に、軽便の機関車、保線用作業車、そして客車が4両展示してある。
客車は、博物館の建物から近い順に、

  • 鎖錠してある普通車
  • 比較的新しめの普通車
  • 木のベンチシートの普通車
  • 日本国鉄の「並ロ」じみた頭等車

の順で並んでおり、1両目は学習室として使われており普段は入れないようだが、2両目以降は自由に入ることができ、休憩室として使うことができる。
飛行機ではあまり寝ていなかったのでウトウトしてしまった。

さて、見るだけ見たので出ようかな・・・ と思ったら、入り口に近い一段下がった所に鉄道模型の展示コーナーがある。
鉄道模型の展示が野外にオープンな形になっているのは、この香港鉄博が初めてである。
とはいえ、日本で想像するような精密な鉄道模型ではなく、おおよそOスケールのKCRの先頭車と、さっき展示していたような緑のアメロコと客車1両という大雑把なものであり、ボタンを押せばそれぞれが走るようになっている。

・・・ということで、香港鉄博で見たものは以上。
さて・・・あとは香港トラムにでも乗りましょうかね。

個人的に単純往復は好きではないので、太和タイウォーではなく現在の大埔塘タイポーマーケットから紅磡ホンハムを目指そうかと思ったが、どう考えても太和タイウォーの方が近い。
それで結局太和タイウォーに戻って頭等ファーストクラスに乗ることにした。どうせ頭等ファーストクラスに乗るなら、始発駅に近い方が空き席も探しやすいというもの。

そして紅磡ホンハムに到着。
向かいのホームは新界へ行く西鉄線と接続しており、同じホームで乗り換えることができる。

このまま尖東へ行けば天星小輪スターフェリー碼頭ピアに行けなくもないが、「火車」つまり長距離列車のターミナルとしての紅磡ホンハム駅を見てみたいと思い降りてみることに。
決死モデル:チームR真夜

大陸からの「火車」の到着時刻が電光掲示板にあったが、その時表示されていた限りでは、広州東から来るものが主で、1列車だけ佛山から来るものがあったという程度だった。
また、改札は列車の発着時間以外は板で閉鎖されていた。一国二制度の壁と言うのはそのようなものであると感じさせられた。

さて、紅磡ホンハムの駅から天星小輪スターフェリー碼頭ピアに行くにはどうすればいいか。
先述の通り、西鉄線で尖東まで行けばいいのだが、それではなんだか芸がない。
ということで、2階建てのバスに乗ってみることにした。

そう思ってバス停に行こうと思ったら、紅磡ホンハムの駅前にある香港体育館の関係者出口付近に若者がやたら集まっている。
これは何かに有名タレントが来港するという事だったのだろうか。。。

さて、こちらは8番のバスに乗って天星小輪スターフェリーを目指す。
碼頭ピアにいくと、あの法輪功が宣伝をしている。一方では「法輪大法好」と法輪功をマンセーしていたかと思えば、隣では「邪教法輪功」とディスっている。
相反する2つの主張が仲良く隣り合っているのが香港の「自由」なのだろうか。日本でも見習ってほしいものである。

天星小輪スターフェリーはと言えば、中環セントラルへ行く航路だけかと思ったら、中環セントラルの少し東の湾仔ワンチャイへ行く系統もあるらしい。
どうせ行くのであれば、トラムのどちらかに行くこととて湾仔ワンチャイに行ってみるか・・・

尖沙咀チムサーチョイ碼頭ピアは50年代の情緒を感じる古風なものであったが、中環セントラル湾仔ワンチャイ碼頭ピアはそんなことはない。
やたら近代的な建物であった。
裏を返せば、それだけ現在でも香港の一般市民に交通機関として受け入れられていると見ることもできるのかもしれないが。
決死モデル:トルソーさんファラキャ

湾仔ワンチャイ碼頭ピアを出てバスに乗ろうと思ったら、2階に日本そのものの居酒屋が入っている。まるで磯丸水産の様な。
それだけ日本式が受け入れられているのか、はたまた日本人駐在員がやたら多いのか、おそらくはその両方なのだろう。
そう思って写真を撮ったら、そのベランダにいた女性がさっと逃げる。
あ、これはローアングルだった。日本だったらこの時点で人生が終了していたかもしれない。香港でも地下鉄では「盗撮注意」のノーティスが出ているので問題になっているのだろう。

さて、東側の湾仔ワンチャイなので、香港トラムも東側の終点から乗ることとしたい。
筲箕湾チャウケイワンを通るバスならどれでもいいと思って待っていたら、ちょうどその系統が来た。それも筲箕湾チャウケイワンまで都市高速をバイパスする系統なのでありがたい。

筲箕湾チャウケイワンはちょっとしたバスターミナルとなっており、市場が立っている。
決死モデル:チームY城ヶ崎

香港鉄博近くの大埔塘タイポーマーケット同様、なんだか英語が通じなさそうな庶民的なチャイナの市場である。

トラムの終点は周回方式になっている。
このような形態の終点は、日本では川崎市のトロリーバスがそうであったような写真が鉄道ピクトリアルに残っているが、路面電車だと、北陸鉄道の金沢市内線が拡大解釈すればそのような形態になるだろうか。

さて、香港トラムはこの東端筲箕湾チャウケイワンから西端堅尼地城ケネディタウンまで約13kmという長い距離を走る。
全区間通しで走るのは1時間に1~2本であるとのことで、だいたいは中環セントラルまでの区間運転のようである。

どうせ乗るなら2階席で前かぶりで乗りたい。それで中環セントラル行きを1本やりすごして、次の中環セントラル行きを待つことにした。次は香港の夜景を見るために山頂纜車ピークトラムに乗ることとしたい。そのために少なくとも中環セントラルに到達する電車に乗ることにしたい。
・・・と思ったら次の電車は本線筋からそれた跑馬地パウマーテイへ行く系統だったのでパス。
次に乗ったのが中環セントラル行きであり、首尾よく2階最前席をゲット。

高層ビルが迫りくる香港の街並みをのんびり走っていたら日が暮れて、山頂纜車ピークトラムの駅に一番近い紅棉道に着いた頃はすでに真っ暗になっていた。

そして香港公園の脇を通り、山頂纜車ピークトラムの駅についたと思ったらこの行列である。
決死モデル:チームTアンヌ

確かに土曜日の夜なら観光客もかなりいるだろう。しかしこれほどとは思わなかった。
そして1時間ほど並んだだろうか。やっと横断歩道の向こうに行くことができた。

周囲からはチラホラ日本語も聞こえてくる。日本からの客は女性が多い。それもそうだろう。
ケーブルカーだけであれば56HK$、その上の展望台までのセット券では99HK$であった。

山頂纜車ピークトラムの車両はケーブルカーでありながら、日本と違って車体が傾いているわけではない。
また、2両編成であることも大きな特徴であった。

乗った時は首尾よく座ることができ、満員の山頂纜車ピークトラムはかなり急な坂を上って行く。
途中駅は通過していたが、日中は停車しているのだろうか。

そして山頂駅に到着。
駅の中にはお土産物屋や飲食店が並んでいる。

外に出てみると、1959~1989年まで使っていたという車両が保存されている。
やはり車体は傾いておらず、腰高な味のある車体である。
決死モデル:チームR園田

そして再び中へ入り、何個ものエスカレーターを乗り継いで展望台を目指す。
エレベーターにしていないのは、途中の階の店舗に客を入れたいという経営的な思惑であろうか。

中には昭和の日本風な飲食店もあった。
そして展望台の有料区域へ入り、エスカレーターで屋上へ。

そして香港の夜景を・・・

朝の霧はやはり夜になっても晴れていなかった。
さて、今日1日の来意を全て果たした。

あとは地下鉄で油麻地のホテルを目指すだけ。
決死モデル:チームTエリー

しかし香港のホテルは随分と高いね・・・

 

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