秋葉原の事件の犯人の弟さんが自殺されたというのは、かなり有名な話かと思う。
週刊現代の記事では、こんな発言を残している。
「引っ越して、住民登録を済ませると、1ヵ月も経たないうちにマスコミの人が来るんです。インターフォンが鳴り、ドアが乱暴に叩かれる。なんでわかるんだろう、と恐怖を覚えるとともに、やっぱり逃げられないんだな、とあきらめのような感情が湧きました」
これぞマスゴミの真骨頂である。
しかし、そうやって取材された記事を人々は読む。
自分も含めてである。
いちいちこんな事に興味を持つ自分が、果たしてマスゴミを責めることができるのだろうか?
そういう自己嫌悪を抱きながら今回手にした本は「元報道記者が見た昭和事件史」(石川清著 洋泉社 2015年)。
この本は、元NHKの記者が、昭和に発生した凄惨な殺人事件のあった地を訪問して、その事件がその地にどのような影を落としているかを丹念に取材した本である。
ちなみに今回ナビゲートを務めたのはチームR天美。別に響鬼での天美や中の中の人が何かの事件にかかわっているとかではなく、たまたまその日に別のにしこくん仕事があったのでそのついでという程度である。
刑事ドラマとのかかわりも「ケータイ捜査官」や「科捜研の女」に数話出たという程度のようである。
本の話に戻ると、この本に収録されている事件は以下のとおりである。
(「W」はWikipediaに項目がある事件、「K」はその都道府県の警察史に記述のある事件)
- 首なし娘事件(昭和7年 愛知県 W K)
- 一家八人殺し(昭和28年 青森県 K)
- 姫島村リンチ殺人事件(昭和37年 大分県 W K)
- 幼児による乳児惨殺事件(昭和52年 九州某県)
- 人肉鍋事件(昭和20年 群馬県 K)
- 子食い事件(昭和21年 長崎県)
- 美少女バラバラ事件(昭和34年 愛知県)
- 肝取り事件(明治38年 長野県 K)
- 貰い子60人殺し事件(明治42年 佐賀県)
- 主婦惨殺事件(昭和23年 愛知県)
- 人肉黒焼き事件(昭和31年 秋田県 K)
- 人骨黒焼きセールスマン事件(昭和56年 岡山県)
- 秘密宗教「クロ」(鹿児島県 W)
- 女祈祷師人妻解体事件(昭和23年 大分県 K)
- オシラサマ殺人事件(昭和27年 青森県)
- オオサキキツネ事件(昭和30年 埼玉県)
- 「憑き物」殺人事件(昭和45年 青森県)
- 一家九人毒殺放火事件(昭和29年 茨城県 K)
- 栃木実父殺し事件(昭和43年 栃木県 W)
驚くべきことに、結構な割合で、事件の加害者は、加害者と共にその地に住み続けている。
だから事件はその地ではタブーになる、と著者は説明している。
拙ブログで、ある事件を調べていたらグーグルマップでその事件の家が現存していた旨の記事を書いたことがあるが、この本にも掲載されている。
さぞや狭い地域で後ろ指をさされながら極貧のうちに生きていたのではないか・・・ と思っていたが、「あの時代はそのような事があっても不思議ではない」という同情的なとらえられ方をしていたようである。
この本には書いていないが、ある事件について新聞で調べていて、その加害者の名前をgoogleで調べてみたら、何と実名でツイッターをやっていることが分かった。
事件現場から遠く離れたある県の山奥で、顔写真を堂々と出して、妻子にも恵まれているようである。
自分は新聞記者のように、自らの生活をかけて腹をくくって記事を書いているわけではない。とてもじゃないがこの事件は出せたものではないので封印するしかないが、それにしてもこの方は、実名なんか出して新聞記者が押し掛けたりはしなかったのだろうか。
犯罪が起こる土地の習俗や背景については興味深く読めるが、犯罪そのものについては考えさせられる一冊であった。