今日はいよいよ青ヶ島へ行くことにしますよ。
欠損バーの店長も「星空がきれいだというので行ってみたい」と言っていた島である。
ただ、いかんせん名にし負う秘境である。
果たして行けるのか、また帰って来れるのか、それは運次第でしかない。
ただ、5月と11月は台風も無く船もヘリコプターも就航率が高いのだという。特に船の就航率は50%程度であるという。
それで、旅行時期を11月にしたのである。
さあ、今日は行けるかどうか・・・
朝、八丈島の民宿を起きてみると、雨が降ってる!?
民宿の人は「空港まで送って行きますよ」という。
「小島は残念でしたね~」と、もはや「八丈小島に行けなかった人」と認識されている。
「八丈小島は何で行かれようと思ったんですか?」
「八丈小島は昔、人口が50人ぐらいしかいなくて村議会というのが無くて村のことを住民が直接決めたという日本でも珍しい村だったんです」
「八丈小島だったらそうかも知れませんね~ あそこは昔、伝染病が流行ってたんです」
「バクというやつですね。Wikipedia程度の知識しかないですけど」
「女の人がよく罹ってたらしいよ。おっぱいが片方垂れ下がったり・・・」
「へえ。足が太くなるとは聞きましたけど」
「水が悪かったっていいますね」
ほどなくして八丈島空港に到着。
まだ雨が降っており、あまつさえ雨脚が強くなっている。
昨日は天気が良く、今日も雨の予報はなかったのに何で・・・
ヘリコプターを運航する東邦航空の受付は、ロビーの隅っこにある。
まるでJRと接続する地方私鉄のような佇まいである。
それでも8:30過ぎると、受付が始まった。
「条件付き運航」であるという。
「天候次第では戻ってくる可能性もありますけどいいですね?」と。
いずれにしろ、運航する用意はあるようだ。
いや、今日運航できるのはいいとして、問題は明日帰って来れるかどうかである。
まあそれは明日考えればいいか・・・
ほどなくして搭乗時間となる。
(決死モデル:チームTフジアキ;ウルトラマン出身)
9人乗りのヘリコプターに客層は男ばかり。
何やら物好きそうな感じのする客層である。
ヘリコプターの中の佇まいとしては「空飛ぶマイクロバス」いや、「空飛ぶワゴン車」と言った方がぴったりくる。
そんな「空飛ぶワゴン車」は海の上を低空で飛んでいく。
9:20に出発したヘリコプターは9:40に青ヶ島に到着するという。
しかし乗っている時間はもっと長く感じた。
暫くすると島影が見えてくる。
断崖絶壁の上にチョコンと家々が散在している。
あれこそが青ヶ島村である。
そして強風の中を青ヶ島のヘリポートに到着。
(決死モデル:チームWB嵐山;太陽戦隊サンバルカン出身)
八丈島の橘丸と同じように警察官がお出迎えである。
そしてバスの待合所のような待合室には八丈島へ行く客が待っている。
この状態で八丈島行きは運航するだろうか。
客も不安げである。
ただ、荷物は積みこまれている。
一応、運航前提ではあるらしい。
結局、雨風の中を八丈島に向けて出発して行った。
ところでこの青ヶ島の北端にあるヘリポート、周囲は墓地というロケーションである。
そういうものなのか・・・
さて、ではどこへ行きましょうかね。
二重カルデラである青ヶ島だけに「釜内」の方に行ってみましょうかね。
そうして青ヶ島で唯一の商店の前に行くと、電話が鳴った。
「ヘリコプターで着きましたか? 着いたならチェックインしてください」
何とも不愛想な声である。
今日のお宿は青ヶ島郵便局の裏手にある。
(決死モデル:チームPみく;電磁戦隊メガレンジャー出身)
「ごめんください~」と声をかけてみても全く無反応。
厨房では2人の女性が忙しく昼食の調理をしているようだ。
「ごめんくださ~い!」
いくら声をかけても全く無視。
仕方が無いのでお勝手口に回って声をかける。
「はい、まず手を洗ってください。あとマスクもしてください」
八丈島でもそうだったが、マスクには厳格だった。
島だけに、コロナに対してはことのほか厳しいのだろう。
「お弁当も作っておきました」という。
青ヶ島では、ヘリコプターがほぼ唯一と言っていい交通機関であり、昼食が食べれる食堂も無いのでこうして昼食から作っておくのが普通なのだろう。
そのお弁当は「地熱釜」で温めるのだという。
その地熱釜というのは、青ヶ島では一家に一台あるとか?
調べてみると、内輪山の方のキャンプ場にそういう施設があるようだ。
雨なので内輪山に行くのは面倒だったが、結局は行かないといけないようだった。
では歩いていきましょうかね・・・
青ヶ島の道路はすべてコンクリートで舗装されている。
曲がりくねった山道を登って行く。
たまに、軽トラックとすれちがう。
現在の青ヶ島の主産業は、国勢調査によれば建設業が一番多く、40人いるのだという。
そして次に多いのが教員で23人。
島民の本来の産業であるべき農漁業はと言えば、農林業が8人で、漁業がゼロ・・・!?
漁業については、島外への輸送の手段が無いために現金収入とならず、産業として成立しえないという話は聞いたことがある。
しかし農業が8人とは・・・ 壊滅寸前ではないか。
では、何のためにこの島はあるのだろう?
建設業の人が道路や建物を建設して、その子弟のための学校の教師がいて・・・? ということ?
ではその道路や学校は誰のため? たった8人の農業者のため? という感じも無くはない。
兎も角も、100人強しかいない島民のうち、「本来の島民」は既に100人を切っているということになる。
それはともかく、道が下り坂になってきた。
つまり「釜内」に入ってきたということになる。
峠の道路から、二重カルデラを見渡すことができる。
(決死モデル:チームRナオミ;仮面ライダー電王出身)
ここからトンネルを抜けると、急な下り坂になる。
つまり、帰り道はこれを登らないといけないということになる。
とても「都道」とは呼べないようなジャングルの中の道を歩いていく。
そして「丸山」と呼ばれるプリン上の内輪山を登った所に地熱釜はあった。
窯は数基あって、下のレバーを回せば地熱が出てくるのだという。
釜の中には金属の籠があり、そこに食材を入れるようになっているようだ。
宿でもらった説明書きによれば、サツマイモは40分、他の食材は10分程度入れておけば食べごろになるという。
ちなみに、その籠は使いまわしの公共物なのであろうが、別に洗う場所もあるわけではない。
高熱の地熱で充分殺菌できているという解釈であろうか。
兎も角もレバーを下げて地熱で調理を始める。
シュウマイとかウインナーは美味しく食べたが、焼き魚はどうしても苦手だ。
仕方なく宿に持ち帰って捨てるしかないかな・・・
と思ったら猫が来た。
それで、猫にくれてやったら最初は警戒していたが、ものすごい速さで食べ出した。
かなり警戒心の強い猫である。
・・・というか、青ヶ島にも猫はいるのか。
最近ナウル観光局のTwitterが猫写真で固有の生態系がどうたらとか文句を言われたばかりである。
青ヶ島はどうなんだろう?
それこそ「還住」の頃からネズミ捕りのために猫はいたのではないだろうか(推測だが)。
ここで青ヶ島の猫写真をアップロードしたら「固有の生態系が~」とか炎上するだろうか。
まあこういう一生懸命信念のために頑張ってる人を茶化すのは、まるであのヴィーガンデモを茶化しに集まってきたキモヲタ並みのしぐさになってしまう。
「茶化すことに一生懸命」なんて気持ち悪い行為じゃないか。
・・・まあそういう話はいいとして、猫に魚も始末してもらったので、今度は三宝港を回って西側から帰ることにしよう。
青ヶ島の海の玄関である三宝港は、青ヶ島の北端にある集落から見て反対側の南端にある。
やはり外輪山を突っ切るわけだが、昭和60年からトンネルができている。
そ500mのひたすら坂を下るトンネルを抜けると、そこが三宝港である。
さっきまでの釜内の穏やかな天候はどこへやら、無人の港では波が岸壁を洗うほどの強風が吹いている。
なるほどこれでは船の就航率も低いだろう。
(決死モデル:チームY宇崎;獣拳戦隊ゲキレンジャー出身)
ところであの索道は何?
港湾施設としても珍しい気がする。
まあいいや。では上手を通って民宿に戻ることにしよう・・・
と思ったら、通行止め!?
ここまで来て通行止めもクソも無いだろ。
せっかくここまで来たのに遠い距離を釜内を通って、それもあの急な坂を上って帰るのか?
いっそ通行止めを突っ切って行ってみようか。
そんなことをしてもし事故にでもあったら、命を助けてもらえないばかりかネットで「自己責任」だの何だのと叩かれることになろう。
それを引き受ける蛮勇はもはや無い。
だいたいにしてGoogle mapでもそんな表示はなかったので通れると思ったのだ。
どこかにそういう案内はないものだろうか・・・?
そう思ってネットで調べてみたらこんなページに行き当たった。
「山さ行がねが」という有名なページである。
青ヶ島の道路氏について詳細に調べてある。さすがは名門ページ。
iPhoneのバッテリーの残りは30%も無いが、ブツクサと元来た旧坂を戻る上での無聊を慰めてくれるだけの分量はある。
どうにか釜内の急な坂(流し坂)を登り切り、釜外の下り道をゆるゆると下って行く。
どうにか日のあるうちに民宿に戻ることができた。
民宿での夕食は島寿司。
煮詰めに辛子を使っているのが特徴であり、ネタは島で獲れる暖流魚を使うのだという。
結構腹いっぱい食べることができた。
あとは青ヶ島焼酎を飲みながらこのブログを付けるだけ。
今日は結構気合が入っていた。