【ブックレビュー】無敵のハンディキャップ

欠損バーに行ったついでに、改めて「無敵のハンディキャップ」を読むことにした。
かれこれ20年ぶりになってしまった。

この本が出た1999年は、まだメディアに出る障害者はほぼすべからく「障害を乗り越えて生きるすばらしい」聖人視されていた。
逆に言えば、障害者とはそのような「聖人視」というフィルターが無ければ、メディアに出してはいけない存在だった。

本書は、この前年に出た乙武洋匡著「五体不満足」と共に、そのような風潮を打ち破ろうとしていた。
障害者だってどうしようもないやつもいる。だらしないやつだっている。
そういう意味では「普通の存在」なのだ。まずはそのことを世間に知ってほしいという意気込みを感じた。

「障害者はかわいそう」たしかにそうですね。障碍者に同情するあなたの心は綺麗だ!
「では障害者と結婚したいですか?」そう聞かれたら、ほとんどの人が口をつぐむだろう。
黒人を解放したリンカーンだって「黒人を妻にしたい」とまでは言わなかった。

ビキニ環礁で第五福竜丸が被ばくした時、全国から同情の手紙が集まったという。でも「被ばくして入院している船員と結婚したいですか」と聞かれたら「とんでもない!」と言ってのけた。
いつだって、マイノリティへのまなざしとはこのようなもの。
障害者のリアルとは、まさにこの先にあるのだ。

そもそも、この本をなぜ読もうと思ったか。
決死モデル:チームP芳香ちゃん

乙武さんは「五体不満足」を出したばかりで「欠損萌え」の存在に気付くのはその10年も後で、欠損バーだって影も形も無かったし、なんなら欠損バー琴音ちゃんは欠損もしていなかった。今年また17歳の誕生日を迎えたぽわんちゃんは生まれていなかったはずだ。

インターネットも碌に発達していなかった当時「手足の無い女の子」の情報にありつくためには、障害者に関するどんな本でも読み漁った。
パラリンピアン雑誌「Active Japan」だって毎号買っていた。
広大な砂浜の中でひとかけらの砂金を探すような感覚で、どんな本にも飛び付いていた。

結局この障害者プロレス団体「ドッグレックス」に、「手足を切断した可愛い女子レスラー」が出てきたわけではないが、それでも考えさせられることは多くあった。

「かわいそう」以上の何物であることも許されなかった障害者たちが、リングの上で初めてスポットライトを浴び、そのカッコよさとカッコ悪さを曝け出した。
いつか打ち破られないといけないものが、その時打ち破られたのだ。

でも、温かく迎えられ、スポットライトを浴びていられるのはドッグレッグスにいる時だけ。
それぞれの現実に帰り、また仕事に出れば罵倒され蔑まれる日々が続く。
一時だけでも「居場所」を見つけることのできた彼らは、まだ幸せだったかもしれない。

ただ、Twitterで「#metoo」「マンスプレイニング」など、少数者を取り巻く状況にどんどん異論が唱えられる今にあっては尚更、違和感を感じる記述も無くはなかった。
IQ80のボーダーでも障害者手帳を取らなかったレスラーは、今なら発達障害などに認定されているのではないだろうか。

少数者の人権に関する状況は、ネットの発達とともに急激に進化しているものと信じたい。
本書は「懐かしい平成の頃」を振り返る上でも貴重な一冊となるのではないだろうか。

・・・ところで、女子プロレスのリングコスチュームに関して。
割と最近まで、女子プロレスのリングコスチュームって水着かレオタードっぽい感じのが多かったけど、最近はそうでもないのだろうか。

「無敵のハンディキャップ」書中でも、女子の部では以下のような記述がある。

「二人とも日常生活では、寝返りを打つのにも苦労していますからね」
「そんな体の状態でプロレスをするわけですから、お客さんも見るポイントをしっかりと押さえてほしいです」
「そうですね、私はズバリ、千野選手の水着がポイントとみました。何か、おニューみたいですからね」

Wikipediaには、以下の記述がある。

特に女子プロレスでは試合用の服装のことをリングコスチューム、それを略してリンコスと呼んでいる。
日本女子プロレスの黎明期からは長い間はシンプルなワンピース水着やレオタードが定番となっていた。それまでのお色気を払拭してスポーツ色をより高めることの表れであった。ヒールレスラーの場合は下にロングタイツを着用する場合が多い。1990年代までのアメリカも同様にレオタードが定着していた。
かつては全日本女子プロレスが全盛を極めていた当時はデビュー直後から1年間、新人女子選手のコスチュームといえばスクール水着タイプのコスチュームとアマチュアレスリング用のシューズというのが定番のスタイルであった(同じようなパターンは男子レスラーでも同じであり、新人のコスチュームは黒いショートタイツに黒もしくは白いリングシューズという俗に言うストロングスタイルと呼ばれるものが定番として挙げられているが、団体によってはカラーのショートタイツも採用されている)。
一方でアイドルから転身したミミ萩原は全盛期にハイレグなどセクシー面が強調されたコスチュームを使用するようになった。クラッシュ・ギャルズの全盛期になると競泳水着がポピュラーとなる。
しかしジャパン女子プロレスが旗揚げされるとフリルやレース付きコスチュームが登場。その後もセパレート型やユニタード型など多様化が進んだ。アイスリボンなどでは私服に近いコスチュームでリングに上がる場合もある。広田さくらなどいわゆるコスプレで試合を行う選手も少なくない。ただ女子プロレスでは長年水着が定着していたため水着を改修したものを主に使用しており最近まで水着とは似つかぬものも含めてコスチュームのことを水着と呼んでいた。

相撲界で食事全般を「ちゃんこ」というのと同じで、リングコスチューム全般を「水着」と呼んでいた、と・・・

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