さあ、今日はポイペトからプノンペンまで列車で行くことにしますよ。
長らく戦火により運休していたカンボジア国鉄の北線(プノンペン~ポイペト)が、いよいよ復活するのだという。
カンボジア・ロイヤル鉄道のサイトによれば、毎週火曜日はポイペト→プノンペンの列車が予約できるようで、何と年内は無料運行なのだという。
これは乗らない手はない。
ところで、カジノで賑わうポイペトで、このホテルも1階部分がカジノになっているのだが、巨大なゲームセンターという感じ。おおよそこんなもんだっけか・・・?
(決死モデル:チームP桃園)
そもそも、なぜポイペトがカジノで賑わっているかというと、国境の向こうのタイではカジノが禁じられているからで、射幸心の高いタイ人を相手にカジノで一儲けしようとなったのがカンボジアである。
その辺りの事情は、京都府でトルコ風呂が条例により禁止された際、大挙して雄琴温泉にやってきて一大トルコ街ができたのと事情は似ている。
それで昨日もあれだけタイ人が国境を越えてこちらにやってきていた。
そしてこんな早朝もルーレットやらなにやらやっているのである。
カジノってそんなに面白いものだろうか・・・?
そう言ってしまうと、では列車に乗ることが何か面白いのか?という事になってしまう。
楽しみは人それぞれという事だね。
さて、貧富が露骨に交じり合うこのポイペトの治安は悪評が高い所であり、「地球の歩き方」に至っては「よほどの事情がない限りタイ側のアランヤプラテートで泊まった方がいい」とまで書かれている。
自分としては、朝6:30のポイペト発の列車に乗らなければならないという「よほどの事情」があるので、ポイペト側に宿泊したのである。
Google mapで見る限りでは、ポイペトの駅はかなり荒廃しているようである。
いくらカンボジアとはいえ、この状態で駅を利用する人がいるだろうか。物陰から何か出てこられた日には、決死どころではなく「荷物に固執せず、自分の生命を守ることに専念してください」という状態になるのではないかと思っていた。
・・・と、実際に来てみると、駅舎は荒廃していた頃の面影はあるが、きちんと整備されていた。
(決死モデル:チームTヤギー)
やはり、この工程で一番の鉄ネタはこのポイペト駅になるので、ここでヤギーを投入することにしたい。
ただ、気になることにこの駅には人っ子一人いないのである。
RPGで言えば「へんじがない ただのしかばねのようだ」という状態である。
例えばこれが夕張線とかのように自動閉塞化しているというのであればそれも理解できる。
でも、1週間に1本しか来ないこのカンボジアで、そんな高等な芸当はやりようもない気がする。
ともかくもホームに出てみよう・・・
全然列車も何も来ていない。
出発の20~30分前でこんなことがあるだろうか?
南線のシアヌークビルの時は、30分前には既に機関車はエンジンを動かして待っていた。
これはどうも、全く運行しないという気配が強い。
一応出発時刻の7:30まで待ってみることにする。
いったい何が悪かったのか?
予約ページだけ見て、予約をクリックしなかったのが悪かったのだろうか。予約が1件も入ってないのを見て、運航しないことに決めたとか・・・?
仕方がないので、バスターミナルへ行くことにしたい。
Google mapで「bus station poipet」で検索すると、ホテルから駅に来る途中のロータリーのあたりにあるという。
しかしそれらしきバスは無いようである。
それで、なぜか羽田空港で1冊だけ残っていた「地球の歩き方 アンコールワットとカンボジア」を見てみると、何とポイペト駅より先の、新市場の所にあるらしい。
あの時、虫の知らせか「地球の歩き方」を買っていてよかった。
(決死モデル:チームY楼山)
バスターミナルでは待つことなく、バッタンバンまでの切符を5$で買って出発。
バスに揺られること3時間半。
バッタンバン郊外のバスターミナルに到着。
(決死モデル:チームWBラジエッタ)
バスターミナルに到着すると、決死する暇もなくトゥクの運ちゃんが纏わり付いてくる。1秒だって離れることはない。
仕方がないので「ノーリー」と言うと、
「OK、バンブートレインだな、乗れ」と言う。
「いくら?」
「5$!」
へえ、そんなもんでいいんだ・・・ これでも外国人相手だと吹っ掛けてる方かも知れないよな。何か金銭感覚狂っちゃうよ。
「あんたどこから来たんだ? 中国か? 日本か?」
「北朝鮮だよ!」
「オウ、コリア!」
・・・と、街中のロータリーにある巨大な仏像の前で止まった。
「ほら、この仏像の前でお前らの将軍の金正恩が***したんだぞ」みたいなことを言っている。
この運ちゃんは意外に親切かもしれない。
そして第四世界を絵にかいたようなバッタンバンの街を抜け、トゥクに揺られること20分程度。郊外の村のバンブートレイン乗り場に到着した。
今や、バンブートレインはバッタンバンの主要な観光資源となっており、何台もの台車が並んでおり、世界中から観光客が来ているという状態である。
(決死モデル:チームPみく)
ネットでは、バンブートレインは5$であると聞いていたが、実際には10$だった・・・ というか、トゥクの運ちゃん、あんたも乗るの?
・・・まあいいか別に。「あんたは乗るな!」みたいな野暮なことは言うまい。親切な人ではあるようだし・・・
ともかくもバンブートレインで出発である。
バッタンバンといういかにも第四世界じみたこの都市名は、バンブートレインがバッタンバッタン走ってるからじゃないかと思う程バッタンバッタン走る。
一面に広がる水田と、散在する熱帯樹 ――― これがカンボジアの原風景であり、この風景の中で大量虐殺が行われたのだ。平和で豊かだったはずのこのカンボジアで。
・・・と、向こうからもバンブートレインが来た。
バンブートレインの不文律では、客が少ない方が道を開けることになっているらしい。
客が少ないのは明らかにこちら。
バンブートレインの運転手と、トゥクの運ちゃんが台車を手早くどける。
ああ、トゥクの運ちゃんが乗っていた意味と言うのはこういう事だったのか。
そして向こうのバンブートレインが通過したのを見届けて。こちらも台車を戻して運行再開。
終点となる地点には、小規模ながら市が立っていた。
Tシャツを3ドルで売っている。
そうか・・・ 3ドルだけでも十分儲けになるのか。やっぱり金銭感覚狂うわ。カンボジア。
トゥクの運ちゃんはTシャツを買っていた。娘にやるのだという。
そうだよな・・・ 家族を抱えているのだ。だからこそ外国人観光客にまとわりついてでも仕事熱心になる。
そして元来た地点に戻り、トゥクでまた戻ることに。
さっきバンブートレインですれ違った白人女性2人組と相乗りすることになった。何でも、彼女たちが乗ってきたトゥクが故障したらしい。
運ちゃんは、その女性2人組にも積極的に営業を仕掛ける。
「こっちには寺があるぞ」
「私たちはホテルに友達を待たせてるので・・・」
白人女性たちは面倒くさそうに営業を躱す。
彼女たちは、いかにも外国人向けらしいお洒落なホテルで降り、自分は郊外のバスターミナルへ。
運ちゃんはやはりここでも親切だった。
発車しそうなバスを探しまわってくれた上で「切符売り場はあそこだ。プノンペンまで10ドルだぞ」とのこと。
鬱陶しくはあったものの、意外に親切な人だったと思う。
ありがとうトゥクの運ちゃん。
(決死モデル:チームTアンヌ)
さて、バッタンバン発のバスは、満員になったタイミングで一路プノンペンへ・・・
ネットで調べる限りでは、バッタンバンからプノンペンまでは、バスで6~7時間かかるらしい。
で、途中で休憩したり客を拾いながら走るから遅いとか、車内でカラオケ大会が始まるだの、日本語の旅行ブログではあまり評判がよろしくない。
そんなもんかな・・・ むしろ、そんなアジアンカオスな状態こそ旅の醍醐味だったりしない?
で、やっぱり6~7時間窮屈な車内で座ってるというのは結構苦痛である。
バッタンバン~プノンペンのちょうど中間点であるKrakorという所で休憩となった。
(決死モデル:チームT美川)
自分にはむしろこの休憩はありがたかった。
さて気分を一新し、プノンペンを目指すことにしましょう・・・
おそらく、自分の見積もりではプノンペンへは20時ごろの到着。つまりすっかり日が暮れた状態という事。
本当は、バッタンバンから大枚はたいてでも飛行機に乗ってみたかった。そうすれば、噂の空港連絡鉄道にも乗ることができたはずなのだ。
しかし、現在バッタンバン空港自体、飛行機が飛んでいないという。そりゃまあね・・・ この第四世界のカンボジアでそこまで飛行機の需要なんてあるはずもなしと。
さて、バスがプノンペンに入ったのはすっかり日も暮れた時だった。
どこのバスターミナルに到着するんだろう・・・ と思っていたら、プノンペン駅もオルセーマーケットも通り過ぎる。
おいおいどこ行くの・・・? と思ったら、プノンペンの南のはずれのオリンピックスタジアムの近くの、そのバス会社のターミナルに到着したのだった。
(決死モデル:チームTエリー)
バッタンバンの時とは違って、トゥクの客引きも意外に淡白である。さすがプノンペンは都会っ子・・・ なのだろうか。
どうせ市街地の南のはずれに来たのであれば、遅い夕食は北レスにでも行くか。
ただ、トゥクの運ちゃんが北レスの位置を分かっているわけではない。
そこで、スマホを見せつつ「第一総合病院」を目指してもらう事に。
何か日本語が聞こえてくる・・・?
アンコールワットのあるシェムリアップならともかく、プノンペンに日本人が何の観光に来るのだろう。それともビジネス系の駐在員?
自分はと言えば大同江ビールと牛肉チゲを頼むことにした。
あとは寝るだけ。