「国鉄の良ちゃん」の足跡

平成6年に映画「さくら」が公開された。

この映画は、「太平洋と日本海を桜で結ぼう」と国鉄バス名金急行線沿線に2000本もの桜を植えた国鉄バス中部地自美濃白鳥自営の佐藤良ニ氏の生涯を追ったものであるが、そのクライマックスは、ラストのJR東海バスになった平成に入っても、各バス停で桜が咲いているシーンではないかと思っている。

ちょうど庄川桜のシーズンでもあることとて、今回の決死旅行は、その足跡をたどる旅としたいと思う。

そんな今朝は、10連休の初日となり、新幹線ホームは物凄い混雑となっている。
特に自由席は到底乗れたものではない。
各号車の各扉に「最後尾」の札を掲げたアルバイトが立っている。
決死モデル:チームPユウリ

最初は10:23発ののぞみ321号に乗ろうと思ったがとても座れたものではなく、10:26発のこだま647号で10:30名鉄バスセンター発に間に合うかどうか調べたら、名古屋13:09着で21分の待ち合わせ。
時間的に微妙だが、まあ間に合わなくもないだろうということで「こだま」車内の人となる。
ただし、少しでも遅延が発生したらそこでアウトである。

「こだま」を名古屋まで乗り通すというのはなかなか骨の折れる業である。
というかこだまの本数はかなり少ない。

このこだま647号の場合、小田原で4分、三島で3分、新富士で4分、静岡で5分、豊橋で7分、そして三河安城で4分停まって「のぞみ」「ひかり」に道を譲る。
決死モデル:チームRハナ

三河安城なんて、こんな時でもなければ決死なんてできない。

そして終点の名古屋に到着。
決死モデル:トルソーさんナイ

ホームで棊子麺きしめん の一杯でも食べたい所であるが、この混雑では時間内にまともに名鉄バスセンターに着けるかどうかも怪しいので、泣く泣くあきらめて駅の表へと歩を進める。

それにしてもGW初日の名古屋駅の混雑は凄い。
名古屋からどこかへ行く人もいれば、どこかから名古屋へ来た人もいるだろう。
名古屋駅の表口に出るだけでもかなりの時間になってしまった。

さて、名鉄バスセンターは名鉄百貨店の3階にある。
ということで急がないといけない。

途中、アジア系外国人らしき女性が、カードを手渡して何かを呼びかけている。
秋葉原でもあったような最近流行りの詐欺? しかしアジア系外国人は研修生などで搾取され貧困に喘いでいるから、金銭の交付を求める内容出会ったとしてあながち詐欺ではないのかも知れないがいかんせん急いでいるので確認することはできなかった。

ところで名鉄百貨店の前には「ナナちゃん」がいる。
TRS48でナナといえば他ならぬノノナナがいるので一枚。
決死モデル:チームWBノノナナ

名鉄バスセンターは、東海圏の色々な所にバスが出ている。
それでは郡上八幡行きのバスに乗りましょう。

郡上八幡行きのバスは岐阜バスが運行しているが、車体に「郡上八幡」と大書しているので分かりやすい。

ともあれ、どうにか間に合って郡上八幡を目指す。
車内には2人しか乗っていない。GWでこんなもんなのか・・・?

名鉄バスセンターを出てすぐ高速道路に入り、あとは道なりに北へ行くだけ。
東海北陸道の開業以来、北濃地方もかなり距離が縮まったようである。

ところで、急いで来たのでトイレに行っていなかった。
トイレ休憩がないか聞いたら「無い」という。
それに車内にはトイレもない。

そして郡上八幡に到着。
駅ではなく、城下町プラザという物産施設で、バスターミナルも兼ねているようだった。
決死モデル:トルソーさんアハメス

それにしても乗り場の数がすごい。
事業者ごとにポールを多々ているようで、道路に近い順に、以下のようになっている。

・郡上八幡市自主運行バス(小駄良線)
・VIPライナー(名古屋〜高山)
・岐阜バス(名古屋方面)
・白鳥交通(美濃白鳥方面)
・八幡バス
・郡上タクシー(デマンドタクシー)
・まめバス(郡上八幡市内循環)

飛騨牛がこの辺りの名物のようで、飛騨牛コロッケを屋台で買い求める。

周囲ではそこかしこで中国語が聞こえてくる。
つまり、中国人にもそこそこ名の知れた観光地であるということ。

確かに、古い町並みの保存に行政として余念がないようである。
ここまで観光にオリエンテッドした町であるということは知らなかった。
決死モデル:チームTフジアキ

確かに、郡上八幡町役場など、古い洋館風の建物も保存してある。

この辺りは蕎麦の栽培も盛んであるようで、蕎麦屋がいたるところにある。
蕎麦は、寒冷な気候や痩せた土地でも栽培できるので、北海道でも幌加内や江丹別や新得などの極寒の地でも蕎麦どころが多い。

郡上八幡駅は、市街地から相当離れたところにある。
蕎麦を食べたこととて、腹ごなしに歩くこととしたい。

郡上八幡の町並みは、長良川の支流である吉田川沿いに開けており、その吉田川が長良川に合流する地点からさらに長良川を下った所に、長良川鉄道の郡上八幡駅がある。
決死モデル:チームRナオミ

駅の玄関には「GJ8マン」のパネルが置いてある。
GJ8マンは、さくらももこが勝手に郡上八幡に惚れ込み制作したのだという。
その勝手に制作した作品が地元で受け入れられているようで何よりである。

その郡上八幡駅の構内はやたら国鉄情緒がある。
下手なローカル線の駅より規模としては大きいのではないだろうか。

ところで待合室は暖房もかかっておらず寒い。
東海地方だと思って油断していたが、かなりの寒さである。

美濃白鳥や北濃方面は跨線橋を渡って2番線となる。
待つことしばしで北濃行きが来る。

あとは郡上市内の移動となり、ものの30分程度で美濃白鳥へ。

美濃白鳥は国鉄時代からの古い駅舎が残っている。
それも閉塞方式はタブレット交換である。
決死モデル:チームR持田

美濃白鳥の駅前に出ると、やはり古い町並みが広がっているが、郡上八幡ほど意識して古くしている訳ではない。
この白鳥は、城下町というよりは宿場町の色彩が強いようである。

それにしても川風が寒い。
その長良川を渡って、今日の宿である民宿へ向かう。

今日泊まる民宿は、「太平洋と日本海を桜で結ぼう」と国鉄バスの車掌の傍ら桜を植えていて、その給与収入だけでは生活できないと言って妻が民宿を始めたのが始まりであるという。
決死モデル:チームWB嵐山

つまり、冒頭の映画「さくら」で田中好子が演じたところの妻がやっている宿ということになる。

現在はその女将も、80歳の坂を越え、ほとんど旅館の業態をせず、たまに仕事で来る素泊まりの客だけを相手に営業しているのだという。
宿泊客は、自分の他には1名だけであった。

女将に来意を問われ「千葉から来た。何か荘川桜や佐藤氏に関する写真などあればお店願えないか」というと、
「お父さんを撮った映画のビデオがある。お客さんが送ってきてくれた。居間に来てそれを見ればいい」と、数本VHSテープを持ってきてくれた。
女将は、夫である佐藤氏を「お父さん」と呼んでいた。

その中で、冒頭の篠田三郎主演の「さくら」を見せてもらうことにした。

国鉄バス名金線を舞台とし、美濃白鳥自動車区に勤務する主人公の話なので、前編が郡上弁であるが、自身を演じる田中好子の台詞回しに「郡上弁がじょうずでなぁ」と言っていた。

佐藤氏の桜にかまけるあまりの生活の苦しさにも、妻であるこの宿の女将は、2人の娘を大学にやろうと頑張っていた。
しかし篠田三郎演じる佐藤氏は「人間の値打ちは学歴じゃないぞ」と娘に言って泣かせてしまう。
これを見ていた女将は「お父さんは『女は中学校だけでええ』言うとった。でも娘を高校だけは行かせることができたけどねぇ」
映画では相当美化したところがあるようである。

夫に先立たれてすでに40年以上が経過しており、現在ではテレビを楽しみに生活しているようだった。
「撮影に来た時、田中好子さんはもう癌だったと言うでねえ、そんなことは知らなかった。表に出さない田中好子さんはさすがプロの女優さんだと思った」という。

期せずして、佐藤氏御本人の奥様と会うことができ、居間に通してもらって「さくら」を見ることができると言う稀有な体験をさせてもらった。

 

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