以前「もし自分好みの女性が目の前に現れたら?」というテーマで一文書いたことがある。
実際の話をすると、そのようなことが実際にあったのである。
それは、大学進学のために上京したその日のことだった。
まだ東北本線には寝台特急が残っており、「はくつる」は583系で走っていた。
ついに田舎の生活から解放され、今なら狭くてとても寝られたものではない3段寝台に乗って、これから始まる東京での大学生活を夢見ていた。
とはいえ、夜の有効時間帯は上野から500kmも離れていない一ノ関あたりに設定されていたはずだ。
それで、上野の到着は6時台の早い時間に設定されていた筈だ。
ハイケンスのセレナーデで目が覚める。
「長らくのご乗車大変お疲れ様でございました。次は終点 上野、上野でございます」
もう赤羽も通過し、すでに都内に入っており、大急ぎで降りる準備をした。
そして上野駅に降り立った。
まだこの時点で6時台であり、今から電車に乗り換えて大学へ行っても何もできない時間である。
しばらく、上野駅の中をいろいろ見て回ることにした。
当時、上野駅にはJR直営の鉄道グッズの店「ホイッスル」があったはずだ。
その入り口の階段でのことである。
入谷改札に向かって、ショートボブの女子高生が階段を上っていく。
当時はルーズソックスの頃だ。
なぜか松葉杖をついている。
怪我でも知ってるのだろうか?
見てみると、足のツヤがなんだか無機質な感じだ。
そして膝裏は… ジョイント!?
殻構造大腿義足!?
あまりに突然のことになすすべもなかった。
その義足の女子高生は、入谷改札か上野公園かのほうに去っていった。
まさか追いかけ回すなどという性犯罪者染みたマネもできないし…
あれは幻だったのだろうか?
あの頃を偲んで、入谷改札の辺りを歩いてみたい。
しかし、「ホイッスル」のあったあたりが全く見つからないのだ。
確か、上野駅の浅草愚痴を左手の階段を上って、その踊り場にあったのではないかと思うのだが、こんなオープンエアなスペースではなかったはずだ。
それとも現在のスポーツジムのある方?
いや、確か階段を登る方から見て左手に「ホイッスル」があったはず…
いや、やっぱりこの辺りだったのかな…
どこかの時点で建屋を取っ払って,こんなオープンエアなスペースにしたのだろうか。
もはや、上野駅は「はくつる」が走っていた頃の面影がどんどん消えていっている。
もちろん、頭端式の13〜17番線は現在でも残っているが、もはや特急列車の発着もない。
単なる「電車駅」となっている。
でもそれでいいんだ。
万物は流転するもの。
流転する全てのもののために、思い出をまた一つ供養したということ。
さあ、明日に向かって歩き出そう。
そんな私的devotee史。